英語教育に関わる思考の変遷

昨日は休みでしたが,午前中は車のヘッドランプの修理,午後は美容室と日程が決まっていたので,空いた時間はセンターで色んな準備事をしました。カット後,近くの比較的大きな本屋に出かけましたが,よくよく考えてみると,世の中にはよくもこんなに本の著者がいるものだな〜(笑)と改めて思いました。英語に関するものだけでも色んなコーナーに散らばってたくさん置かれていますが,一番目立つ物は一般向けに書かれた「英語ができるようになる」というニュアンスで書かれた参考書,単語などの類のものですね。TOEICに関する書籍もかなりの数がありますよね。それだけ需要・求めている人が多いのだと実感します。


本屋の中にはEFL向けに作られたテキスト,ESLにおいて使われているような教材・教具なども多く見かけます。ペーパーバックや語学に関するものも上記にあげた書籍以外にもかなりの数があります。専門書の類になってくると,授業実践的なHowtoものからSLAに関するもの,諸言語学に関するものまでが置かれていました。これまでには書籍には個人の許す範囲の中で比較的ルーズに投資をしてきましたが,何を読んできたのかをふり返ってみるとそれは間違いなく自分の英語教育に対する思考の変遷だよな〜と思います。


教師として働き始めた頃は,一日に4時間・5時間と次々にやってくる授業をいかにこなしていくかに必死でした。その時期は大学の時の自分の立てたレッスンプランを柔軟性もなくこなすだけの所から,時数が増えて数をこなしているという,「授業」をするということに少し慣れた,だけの状態と言えるのではないかと思います。その時は,授業の内容的な側面について(決して知的にではなく)「楽しい」授業を構成するためであるとか,英語の授業をマネージメントするために参考になる書籍をよく読んでいました。


数年して各学年を一通り経験し,英語を教えることの全体像を少しずつとらえることができるようになった時には(それでもお恥ずかしいレベルには間違いありませんが),それまでに読んだ書籍にある先生方の授業と自分の授業を比べてみた時にその差に愕然とし,授業の改善の必要性を強く感じました。自分の行っている授業の方向性は正しいのか,理論的な側面から見たときにはどうなのか・・・そんなことについて考えるようになりました。アクションリサーチというワードに触れ,佐野正之先生の「はじめてのアクション・リサーチ」を読んで,生徒の実態からちょっとしたテーマを掲げ,その解決のために実践をしたりしました。技を紹介している達人先生の授業を映像や書籍を見て,学校での教科としての「英語」は英語を通して行う教育なんだと強く認識したのもこの時期です。


そうこうしていた時,英語ができるようになるとはどういう事か,について考えるようになりました。その時期によく読んだのは大津由紀雄先生編著の「日本の英語教育に必要なこと」「危機に立つ日本の英語教育」などです。日本の英語教育政策を読んで学び,英語教育が抱える課題などについて広く知ることとなりました。学力としての英語・language learnerとコミュニケーションとしての英語・language userとが混在している中で,授業でどのように生徒を育成していくかを考えを巡らせた(もちろん今でもしていますが)時期です。


その頃から大修館「英語教育」や各種メディアで(意識的に)よく目にすることが多くなったのは中嶋洋一先生や田尻悟郎先生などの授業に対する考え・取り組み方です。「すぐれた英語授業実践」や「ヒューマンな英語授業がしたい!」「生徒の心に火をつける−英語教師田尻悟郎の挑戦」「(英語)授業改革論 」などを読みました。また「わくわく授業」のDVDについても拝見しました。書籍の先生方の授業やその考え方は,自分に大きなショック(良い意味で)を与えてくれました。かなり触発され「生徒を育てていけばこんなことまでできるのか!」と強く,そして革命が起きたように思えました。しかし,先生方の考えを取り入れながらも模索する日々の中,柳瀬陽介先生の考えに触れることができました。柳瀬先生のブログや著書「リフレクティブな英語教育をめざして―教師の語りが拓く授業研究 」からは,一英語教師としてのあり方:自分は何をしたいのか,何をどのように考えて実践をするのかなどについて深く考えること(まだまだ先生のほんの一部をかじっただけにすぎませんが)の大切さを学び,そしてそこから教師としての突き抜け感を感じました。


自分が目標とするよう達人の先生方のような授業ができるようになるには,と考えを深めているとキーワードとしてフォーカス・オン・フォームというワードを見聞きするようになりました。和泉伸一先生の『「フォーカス・オン・フォーム」を取り入れた新しい英語教育』を読んだ時には,その考えは達人の先生方の授業にも共通するものであり,これからさらに求めていかなければならないものだと思いました。同じくして第二言語習得についても非常に興味を持ち,白井恭弘先生の「外国語学習の科学」や「英語教師のための第二言語習得論入門」などをきっかけにSLAについても知見を得ることとなりました。村野井仁先生の「第二言語習得研究から見た効果的な英語学習法・指導法」は今年の研究の基幹書籍として使わせて頂いています。またSLAを研究されているR.Ellis先生のSecond Language AcquisitionやC.Doughty&J.Williams先生のFocus on Form in Classroom Second Language Acquisitonなども研究的な視点から学ぶことが多くありました。SLAについて学んでおくことは英語教師としては本当に必須なことだと思うことができました。


このように学びを進めても自分が大した授業ができるなんてことは全くありません。色んな先生方の英語教育に関する考えを参考にさせて頂きながら自分が出来うる最善を尽くそう,と思っています。これからも日本の英語教育・・・といえば話は大きすぎですが,目の前の生徒の英語力を育成するためにできることついて学び続ける意欲を持ち続けて頑張ろうと思います。